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伊勢路…に繋がる路…に向けて

oujtfkansai

※この物語はフィクションです


1年前の4月、放送大学に入学した男、秦純一。前年、丹後駅伝初出場を決めた僕たちは、数人の勇退・休部に伴い、新たに一緒に走るメンバーを探していた。まぁ、学生陸上を経験して戻ってくるなんて、「よっぽどの物好き」か「なにかしらの未練があるやつしかいない(偏見)。彼は、どちらかというと後者のクチではないか。


話を過去に戻そう。高校時代の秦純一は、インターハイシリーズに3種目で参戦。1種目でも府大会に進むのは難しいのに、3種目とも府大会に駒を進めたすごいやつだ。(ちなみにキャプテンもそうやで!)当の府大会でも3000mSCで8位入賞、あと一歩で近畿大会を逃すも、"ちょっとどころじゃないぐらい速いやつ"である。(ちなみにキャプテンも1500m決勝いったで!)その後、そこそこ陸上に力を入れている大学に進学し、非強豪校であれば【準エース級】とされる10000m31分台までタイムを伸ばしたが、部内で主務を任された。もちろん本人も諦めたわけではなかっただろうが、強豪校という壁が彼に立ちはだかった。


そんな彼が、放送大学入学を決意するに至った未練とは。

――1つは駅伝、これは2022年、無事アンカーの座を射止め区間18位、晴れて放大の【準エース級】となり、その夜おいしそうにお酒を呑んでいたのでまあOK。

――もう1つはインカレ、このために向けて冬場頑張って走りこんだ(本人談)らしいが、肝心の標準突破の機会を仕事の繁忙期により逃し、本年の出場はかなわなかった。まあこればっかりはしょーがないので来年頑張って。

――そして最後が、6月に行われる「全日本大学学生駅伝 関西地区予選会(通称:伊勢予選)」。まず関西で12校しか出場できない本大会、そして各校10人しか走れない。強豪校でメンバー入りするということは、すなわち戦力として認められるということである。当然、ただ持ちタイムが速いだけではだめで、「安定感」「勝負強さ」等、トータルでの強さが求められる。


秦純一を迎え入れたころの放大は丹後駅伝初出場を決めた翌年でやや浮足立っており、どうせならもっと上のステージの伊勢予選目指してみようぜとか言ってた。まあ結局伊勢予選は箸にも棒にもかからなかったし、なんとなく部として目指すにはハードルが高すぎたとなり、この目標は取り下げられていた。そのため、今年はチームとして目標にしていない。


ただ秦純一をこの舞台に立たせたい。誰に頼まれたわけでもないが、それが自分にとっての小さな目標になった。チーム目標はあくまで丹後駅伝。ただ、丹後のためにも春先に10000mを走っておくに越したことはないので、情報を集めて部員の参加を呼びかけた。大会中止や見逃しも重なり、結局残った大会が5月13日京産大記録会。かつて10月頭の記録会で暑すぎて走れない経験をした4年生たちは、(出場できるメンバーの全員が)参集した。秦純一はいなかった。


当の自分は、呼びかけたもののあまり出る気はなかった。というより、今年は自分の記録には期待できなさそうだったので、昨年のうちに自身の記録を42秒更新しておいたのである。それでもエントリーすることにしたのは、ちょっとだけ勧誘した引け目を感じていたのであろうか。午前の用事がうまく進み、娘が14時までにちょうど昼寝に入る、これが最低限の出場条件だったが、こういうときってなんかうまくいきがち。それでも、家族ですごせる貴重な日曜日の半分を犠牲にする価値はあるのか?雨天のなか走る意味はあるのか?と、うだうだ迷っていたら、他の出場メンバー(僕の後ろの組で走る)から現地到着したとのLINEが飛び交い、腹を決めた。


片道1時間半かかるのになんでスタート2時間前に家おんねんな。とはいえ、過ぎたるを悔やんでも仕方ない。時短のため、ウォーミングアップは駅からの4kmで賄った。滝のような雨のなか、使い捨てのだっさいサウナスーツで鴨川右岸を駆け上る、そして髪やバッグから水が滴る状態で「一次コールどこですか?」と尋ねるおっさんの姿は、すれ違った女子高生や年頃の女子大生にとってさも見苦しかっただろう。だが、今の僕にそんなことは気にならない。1秒でも記録を更新し彼に捧げる、ただその一心で――。


2周目「ふともも重いなこれ今日無理やな。」

8周目「あかん脚持たん、さよなら(残り17周)」

15周目「誰も落ちてこない。。」

20周目「周回遅れあざした(白目)」

25周目「ラスト200mだけ帳尻合わせておこう。」


結果、私は、秦純一に0.1秒たりとも捧げることはできなかった。


※この物語はフィクションです



追伸


秦純一の実際の入部理由は、当ブログでもご覧いただけます。

日本酒、ビールをあおり判断力が鈍ったところで『おっさん大学生』になるメリットを副将と駅伝主務(*現主将と渉内主務)に永遠と語っていただきました。
かすかな記憶の中で熱い気持ちがふつふつと湧いてきたのが半分、残りの半分はマインドコントロールされたのが今に至る理由です。

――なにを信じるかは、あなた次第。以上、副将でした。

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