153号線のトールワゴンを知っているか。それは今日みたいな梅雨入りの季節、半夜にアクセルを踏んでいると突然後方に同じ容積の車種が現れ、徐々に重なってくる。そんな時は決して振り返ってバックガラスを見たり、シャッターを切ってはならない。
当時、会社に属する陸上部を引退し、社業に専念していた頃のとある夕刻、求人媒体業者との打ち合わせを終え、特にそれ以降の予定がなかったため、定時過ぎに帰路に着いた。就活のワンクール目が落ち着く時期は例年6月下旬。
社員寮に戻り、元陸上部の後輩であるS氏とO氏を食事に連れ出し、いつものうどん屋で少し早めの夕食をとった。
今と比較してSNSなどで気軽に情報を入手できる時代ではなかったが、T田市のIトンネルが心霊スポットで全国的に有名な事は知っていた。
前日も会社の従業員が友人と複数人で訪れたらしい。そんな話をO氏から聞き、3人で話が盛り上がった。
そこは同じ市内でも車で約90分移動しなければならない。平日ど真ん中。帰路に着く時間を考えると億劫なるが、気づけば日産キューブに乗り込んで現地に向かっていた。この車は陸上部のF氏の名義である。彼はいわゆる箱根メンバー当日変更組みで走れなかった方だ。今回の旅路も急用で不参加となり、主人の居ないキューブは山奥へどんどん進む。
実はIトンネルは新旧があり、当時、飯田街道として活用されていた旧Iトンネルが目的地である。本線から右折して細い道に入るのだが、ナビを使っても2度ほど道を間違って通過してしまった。
目的地に着いた頃には23時を過ぎていた。
つづく
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